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【産業別の労働生産性国際比較(日本アメリカドイツ英国フランス)】のグラフ比較 米国が労働生産性は突出している!!

産業別労働生産性水準(2015年)の国際比較(2018年4月)

 

1 はじめに

 

政府は、「生産性革命」の実現を目的とする新しい経済政策パッケージを 2017 年 12 月に発 表した。

2018 年 2 月には、既存の規制に制約されない技術実証などを期間限定で可能とする 「プロジェクト型サンドボックス制度」の創設、データ共有・連携を目的とする IoT 投資減 税、中小企業の生産性向上に向けた設備投資促進を含む「生産性向上特別措置法案」などが 次々と閣議決定されている。

生産性向上のためにあらゆる政策を総動員する姿勢がはっきり と見て取れる。

 

日本の生産性は決して楽観視できる状況にない。

2017 年 12 月に日本生産性本部から発表 された「労働生産性の国際比較」では、就業者 1 人当たり労働生産性は 81,777 ドルと、OECD 加盟国 35 か国中 21 位であり、1990 年及び 91 年の 15 位をピークとして近年では主要 7 か国 中最下位で推移している。

先進諸国に比して低位に留まる日本の生産性は、長期に亘る日本 経済の停滞要因の一つとしても広く認識されている。

 

続けます

  

日本経済の低生産性は何に起因しているのだろうか。

この問いに答えるためには、一国全 体(マクロ)の生産性を、その構成要素である「産業レベルの生産性」にブレイクダウンした 上で、その動向を詳細に観察することが有用である。

こうした理解のもとで、日本生産性本 部では、2016 年 12 月に「日米産業別労働生産性水準比較」を発表した。

具体的には、産業 別にみた日本の労働生産性水準(2010~2012 年の平均)が、製造業で米国の 7 割程度、サー ビス産業で 5 割程度であることが示されている。

また、産業別にみた同期間の日本の労働生 産性水準では、化学(143.2%)や機械(109.6%)が米国を上回り、輸送機械(92.7%)でも 遜色ない水準にある一方、サービス産業においては、運輸(44.3%)、卸売・小売業(38.4%)、 飲食宿泊(34.0%)といった経済に占めるシェアの大きな産業で日米格差が極めて大きいことも明らかとなった。

 

 

日本と、米独英仏の4カ国との比較

 

図中で白抜きは、製造業。

青の網掛けは、サービス業。

に属する産業である。

 

産業別にみた労働生産性格差(産業別生産性(1時間あたり付加価値)と付加価値シェア)

 

 

1 日本と米国

  

1 2015年

産業別にみた日本の労働生産性(就業1時間当たり付加価値額/2015年)は、 製造業で米国の7割(67.4%)、サービス産業で5割(50.7%)。

 

縦軸:労働生産性水準(米国=100)

横軸:付加価値シェア(%)

 

2015年の日米の産業別生産性(1時間あたり付加価値)と付加価値シェア

2015年の日米の産業別生産性(1時間あたり付加価値)と付加価値シェア

 

 

図1から、今回の試算結果において日本の労働生産性が米国の労働生産性を超えている (100 を超えている)産業は化学のみであり、大半の産業において労働生産性が米国を下回っ ていることが分かる。

特に、GDP シェアが 7 割超を占める第 3 次産業では、金融・保険、そ の他のサービス業(洗濯・理容・美容・浴場業といった対個人サービス業を含む)、専門・科学 技術、業務支援サービス業(研究開発サービス、広告業、物品賃貸サービス業など)といった ごく限られた業種以外は、米国の半分にも満たない状況であり、サービス業全体でみても 50.7 と米国の約半分の水準である。

なお、製造業全体では 67.4 で、サービス産業全体の労働生産 性水準よりは高いものの同様に低水準である。

 

農林水産 2.4%、石油・石炭鉱業 17.7%は付加価値シェアが小さいので影響は限定的としても、卸売・小売の31.5%は付加価値シェアが大きい(グラフ上で幅が広い)ため、影響が大きいと思います。

また、電気・ガス・水道の34.4%は、電力・ガス・水道がほぼ地域独占であることからすると、自由化の効果は当分の間発揮されず、労働生産性の改善は遠い道のりでしょう。

輸送用機器は、自動車・造船・航空機・電車車両等ですが、管理人の感覚では57.4%と6割以下に留まっていることに驚きを禁じ得ません。

また、建設が73.0%であることは、健闘していると思います。

 

2 1997年

産業別にみた日本の労働生産性(就業1時間当たり付加価値額/1997年)は、 製造業で米国の7割(72.6%)、サービス産業で6割(57.2%)。

  

縦軸:労働生産性水準(米国=100)

横軸:付加価値シェア(%)

 

1997年の日米の産業別生産性(1時間あたり付加価値)と付加価値シェア

1997年の日米の産業別生産性(1時間あたり付加価値)と付加価値シェア

 

図2は、1997 年時点のデータを用いて同様の試算結果を描画したものである。

図1と比較 すると、非製造業に属する多くの業種において 1997 年から 2015 年にかけて労働生産性水準 に関する日米格差が拡大していることが分かる。

また、重要な点として、幾つかの製造業(例: 化学、一次金属・金属製品、輸送用機械、機械・電機・情報通信機器製造業)において、対米の労働生産性格差が 10%ポイントを超える水準で拡大していることが分かる。

 

 

製造業において、「格差が10%以上拡大」している分野がある!!

 

これらの業種 の多くは、1997 年時点における米国との生産性格差が最大でも 10%ポイント程度に留まって いた業種であり、日本全体の生産性をけん引する重要な役割を担っていた。

今回新たな計測 結果から、サービス産業を中心とする非製造業の生産性について日米間に大きな格差が引き 続き存在する中で、製造業における格差の拡大がみられることが明らかとなった。

なお、非製造業のうち、専門・科学技術、業務支援サービス業の対米労働生産性水準が 1997 年の 43.3 から 2015 年に 54.4 まで改善している点は注目に値するだろう。

同業種には、研究 開発サービス、広告業、物品賃貸サービス業など、多様なビジネスサービス業が含まれてい る。

こうした産業は、サービス業の中でも特に情報処理技術など最新の技術の取り入れが相 対的に進んでいる産業と考えられる。

生産性の向上に向けた具体的な方策を模索する上で、 重要な参考事例になり得る産業と言えよう。

 

 

 

2 日本とドイツ

 

1 2015年

産業別にみた日本の労働生産性(就業1時間当たり付加価値額/2015年)は、 製造業でドイツの9割(88.7%)、サービス産業で7割(65.2%)。

 

 

縦軸:労働生産性水準(ドイツ=100)

横軸:付加価値シェア(%)

 

2015年の日独の産業別生産性(1時間あたり付加価値)と付加価値シェア

 

2015年の日独の産業別生産性(1時間あたり付加価値)と付加価値シェア

 

ドイツの各産業をベンチマークとして日本の労働生産性水準 を示したものである。

2015 年の労働生産性比較の結果を示した図4からは、米国との比較と は異なり、製造業を中心として対独比で 1 を上回る労働生産性の水準を実現している産業が 複数確認される。

一方で、金融・保険を除いて、非製造業に属する各産業が相対的に低い労 働生産性水準に留まっている点には注意が必要である。

日独については、産業構造に多くの 類似点があるとされてきた。

経済に占める付加価値シェアが相対的に高い非製造業における生産性格差は、両国経済全体の生産性格差に直結するものと考えられる。なお、製造業全体 では 88.7、サービス業全体では 65.2 と米国と比べると水準は高い(格差が小さい)。

 

機械・電機・情報通信機器が220.8%とドイツを大きく凌駕しています。この日独の比較結果からみると、米国の生産性は驚くべき高さです。

また、卸売・小売は、ドイツとの比較でも32.3%に留まっています。日本式の卸売・小売は何か特別の問題点があるのでしょうか。

 

2 1997年

 

縦軸:労働生産性水準(ドイツ=100)

横軸:付加価値シェア(%)

 

産業別にみた日本の労働生産性(就業1時間当たり付加価値額/1997年)は、 製造業でドイツの8割(79.6%)、サービス産業で7割(67.0%)。

  

1997年の日独の産業別生産性(1時間あたり付加価値)と付加価値シェア

 

 

1997年の日独の産業別生産性(1時間あたり付加価値)と付加価値シェア

 

図5は 1997 年時点における対独比の労働生産性水準を示したものである。

図4との比較か ら、第一に、輸送用機械、化学、一次金属・金属製品といった主要な製造業種において、労働 生産性から見た日本の優位性が縮小していることが分かる。

特に、輸送用機械では、1997 年 の 170.2 から 2015 年の 126.9 まで低下しており、かつての優位性が失われつつある。

第二に、 非製造業においても、情報通信(1997 年で 58.0 から 2015 年で 36.1)や卸売・小売(1997 年 で 42.5 から 2015 年で 32.2)のように、10%ポイント以上のサイズで、日本の優位性が縮小し ている産業も存在する。

第三に、専門・科学技術、業務支援サービス業の対独労働生産性水準が 1997 年の 43.5 から 2015 年に 86.9 まで大幅に改善している点は、対米比較の結果と同様 に注目すべきであろう。

 

対ドイツ比較は、労働生産性の優位が縮小している分野が複数あります。製造業でも優位は縮小しています。

 

3 日本と英国

 

1 2015年

産業別にみた日本の労働生産性(就業1時間当たり付加価値額/2015年)は、 製造業で英国とほぼ同じ(99.4%)、サービス産業で7割(69.6%)。

 

 

縦軸:労働生産性水準(英国=100)

横軸:付加価値シェア(%)

 

2015年の日英の産業別生産性(1時間あたり付加価値)と付加価値シェア

 

2015年の日英の産業別生産性(1時間あたり付加価値)と付加価値シェア

 

対英国比較では、日本は白抜きの製造業で、優位を占めている部分が多いです。機械・電機・情報通信機器では、249.8%にもなっています。サービス業はすべて、英国を下回っている結果になっています。卸売・小売業は61.8%です。対米国、対ドイツに比べると2倍程度ですが、6割(61.8%)程度です。

 

2 1997年

産業別にみた日本の労働生産性(就業1時間当たり付加価値額/1997年)は、 製造業で英国より優位(100.8%)、サービス産業で8割(75.9%)。

 

縦軸:労働生産性水準(英国=100)

横軸:付加価値シェア(%)

 

1997年の日英の産業別生産性(1時間あたり付加価値)と付加価値シェア

 

1997年の日英の産業別生産性(1時間あたり付加価値)と付加価値シェア

 

英国との比較結果は、図7、図8に示されている。

基本的な結果は、対独比較と同様であり、機械・電機・情報通信機器を除く主要製造業における日本の製造業の労働生産性に関する優位性の縮小、専門・科学技術、業務支援サービス業を除く大半の非製造業における近年の低生産性及び格差の拡大が主たる特徴となっている。

特に、輸送用機械、化学といった業 種における大幅な優位性の縮小が顕著である。

 

 

 

4 日本とフランス

 

1 2015年 

 

産業別にみた日本の労働生産性(就業1時間当たり付加価値額/2015年)は、 製造業でフランスの8割(82.2%)、サービス産業で7割(71.7%)。

 

縦軸:労働生産性水準(フランス=100)

横軸:付加価値シェア(%)

 

2015年の日仏の産業別生産性(1時間あたり付加価値)と付加価値シェア

 

2015年の日仏の産業別生産性(1時間あたり付加価値)と付加価値シェア

 

2 1997年

 

産業別にみた日本の労働生産性(就業1時間当たり付加価値額/2015年)は、 製造業でフランスの9割(86.9%)、サービス産業で7割(73.7%)。 

 

縦軸:労働生産性水準(フランス=100)

横軸:付加価値シェア(%)

 

1997年の日仏の産業別生産性(1時間あたり付加価値)と付加価値シェア

 

1997年の日仏の産業別生産性(1時間あたり付加価値)と付加価値シェア

 

フランスとの比較を図9、図10に示す。専門・科学技術、業務支援サービス業 において日本の労働生産性が大幅に改善している以外は、概ね対独・対英比較の結果と類似 している。

 

おわりに

 

過去 20 年(1997 年から 2015 年)を対象とした分析から、日本の産業別労働生産性に関する以下の特徴が確認された。

第一に、非製造業においては、従来から存在した他の先進諸国 との労働生産性格差が更に拡大している。

第二に、これまでは水準面で他国に比して高い水準にあった製造業の一部業種において、生産性に関する優位性の縮小が確認された。

第三に、 こうした傾向の中で、専門・科学技術、業務支援サービス業に代表されるように、労働生産 性の面で他国にキャッチアップし、一部では優位性を確保している業種も存在する。

 

本レポートでは、欧米諸国との労働生産性水準比較により、サービス産業の労働生産性水準が低位に留まっていること(サービスの質を考慮した場合でも依然として確認されるが)、 製造業の優位性が低下してきていることを示した。

一見するとネガティブなこの結果は、しかしながら、生産性の向上を通じた経済規模拡大の余地が日本において残されていることを 意味するものでもある。

本レポートで観察した産業別の多様な生産性変動を踏まえて、各産業における企業・事業所レベルのレベルで生産性計測を行い、生産性変動のメカニズムを実 証的に理解することが、生産性向上に向けた政策検討の観点からも必要と考える。

 

楽観的すぎるのでは??

 

所感

 

対 米独英仏 に対して、1997年当時に、労働生産性が劣っていましたが、この20年間で、格差がさらに広がっていることに対して、日本の将来があまり明るくないことを暗示しているようです。

サービス業は、劣位であることは知っていましたが、製造業においても優位差が縮小、または、劣勢が拡大していることは驚きでした。

管理人は先入観に強く支配されていたので、今回の文献紹介は非常に有効でした。

 

得た情報を元に、未来を予想し、今後の行動をきめることは重要です。時間はまだ、残っていると思っているので、冷静に判断をします。

 

 

 

 

 

最後までお読みいただきありがとうございました。楠木山人。