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【労働生産性国際比較】その2 グラフ・表 OECD加盟国中では、平均以下

労働生産性比較のグラフを転載します。

 

 

労働生産性 = (GDP)/(就業者数 または 就業者数x時間)

 

労働生産性の比較のグラフと表の一覧 

 

1 国際的にみた日本の時間あたり労働生産性

 

本の時間当たり労働生産性は46.0ドル。順位は、OECD経済協力開発機構)加盟35ヵ国中20位で、前年と変わらず。

 

1 時間あたり労働生産性の順位

2016年の日本の時間当たり労働生産性は、46.0ドル(4,694円/購買力平価 (PPP)換算)。順位はOECD加盟35カ国中20位だった。前年(20位)と比較する と、順位に変動はなかった。

 

  

OECD加盟諸国の時間あたり労働生産性(2016年/35カ国比較)

OECD加盟諸国の時間あたり労働生産性比較グラフ(2016年/35カ国比較)のグラフ

 

2 推移

 

名目ベースの推移をみると、このところ就業者が増加傾向にあることが生産性低下要因となっているが、名目GDPの拡大と平均労働時間の短縮が寄与して前年度から1.2%上昇している。 (実質ベースでは前年比+0.3%の上昇)

 

  

3 各国との比較(米国他)

 

日本の労働生産性は、米国(69.6ドル)の3分の2程度の水準で、ニュージーラン ド(42.9ドル)をやや上回るものの、英国(52.7ドル)やカナダ(50.8ドル)をやや下 回るあたりに位置している。主要先進7カ国でみると、データが取得可能な1970 年以降、最下位の状況が続いている。

 

主要先進7カ国の時間あたり労働生産性の順位の変遷

主要先進7カ国の時間あたり労働生産性の順位の変遷のグラフ

 

 

時間あたり労働生産性 上位10カ国の変遷

時間あたり労働生産性 上位10カ国の変遷の表

 

アイルランドの躍進が目覚ましい。

 

2016年の労働生産性が最も高かったのは、ア イルランド(168,724ドル/1,722万円)であった。

アイルランド労働生産性水準は、1980年代くらいまで日本とさほど変わらない状況にあった。しかし、1990年代後半くらいから、主要国の中でも極めて低い水準に法人税率を抑えることで米国企業を中心に欧州本部や本社機能をアイルランドに相次いで呼び込むことに成功し、 高水準の経済成長と労働生産性の上昇を実現した。

アイルランドの実質経済成長率が2015 年に主要国では例を見ない前年比+25.6%にのぼり、名目労働生産性も同+33.1%と急上昇したのも、多くのグローバル企業がEU域内で展開した事業に関連する付加価値や知的財産権を、会計上、アイルランドに移動させたことが原因といわれている。

こうした要因を加味して GDPを算出することに問題があったわけではなさそうだが、経済成長率や労働生産性が大幅に上昇したからといって必ずしも当地の実体経済や経済効率などが大きく改善したわけ ではないことに注意する必要があるだろう。

 

 

引用を続けます。

 

もっとも、英語圏である利点を活かしながら生産性の高い企業を国内に呼び込むことで生 産性を高めてきた政策は、既に曲がり角を迎えつつある。

欧州委員会多国籍企業を低税率 で優遇することを不適切な政府補助とみなし、2016年にアイルランド政府に対してアップルに130億ユーロ(約1.5兆円)の追徴課税をするよう勧告した

2017年に入っても、アイル ランドに欧州本社を置く米IT大手のグーグルが多くの国で上げた利益などを会計上アイルランドに集めることで納税額を圧縮しているとして、欧州委員会が対応を協議しているほか、 欧州各国も課税を強化しようとしている。

アイルランド政府は反発しているものの、これ までのように低い法人税率によって外国資本の利益や付加価値を上手く呼び込むことで労 働生産性を大きく向上させることは難しくなりそうである。

 

 

というように、アイルランドの大躍進にはカラクリがありました。

  

 

 

2 国際的にみた日本の1人あたり労働生産性

 

日本の就業者1人当たり労働生産性は、81,777ドル。OECD加盟35ヵ国中21位。

 

1 就業者1人あたりの労働生産性・金額と順位

 

就業者1人当たりでみた2016年の日本の労働生産性は、81,777ドル(834万円 /購買力平価(PPP)換算)。順位は、OECD加盟35カ国中21位となっている。 就業1時間当たりと同様、就業者1人当たりでみても、主要先進7カ国で最も低 い水準となっている。

 

 

OECD加盟諸国の労働生産性(2016年・就業者1人あたり/35カ国比較)

OECD加盟諸国の労働生産性(2016年・就業者1人あたり/35カ国比較)の棒グラフ

 

2 米国との比較と推移

 

日本の水準は、英国(88,427ドル)やカナダ(88,359ドル)をやや下回るものの、 ニュージーランド(74,327ドル)を上回るあたりに位置している。米国と比較する と、1990年には3/4近い水準だったが、2000年代に7割前後に低下し、 2010 年代に入ってからは3分の2程度で推移している。

 

米国と比較した日本の労働生産性水準(米国=100)

米国と比較した日本の労働生産性水準の推移のグラフ(米国=100)

 

米国と比較した主要国の就業者1人あたりの労働生産性

米国と比較した主要国の就業者1人あたりの労働生産性の推移グラフ(米国=100)

 

3 就業者1人あたりの労働生産性 1位と2位

 

第1位はアイルランド(168,724ドル/1,722万円)、第2位はルクセンブルク (144,273ドル/1,472万円)となっており、時間当たりと同様、両国の生産性水 準がOECD加盟国の中でも突出している。

 

就業者1人あたり労働生産性 上位10カ国の変遷 

就業者1人あたりの労働生産性 上位10カ国の変遷の一覧表

 

 

 

3 国際的にみた日本の製造業の労働生産性

 

日本の製造業の労働生産性は、95,063ドル。OECD主要29か国中14位。

 

1 製造業の労働生産性の水準

 

日本の製造業の労働生産性水準(就業者1人当たり)は、95,063ドル(1,066万 円/為替レート換算)。これは、ルクセンブルク(96,014ドル)とほぼ同じ水準にあ たり、米国(139,686ドル)の7割程度の水準。

 

製造業の名目労働生産性水準(2015年/OECD加盟国)

製造業の名目労働生産性水準のグラフ(2015年/OECD加盟35カ国比較)

 

2 製造業の労働生産性の順位

 

順位でみると、1995年以降では過去最低だった2008・2014年と並ぶ14位とな っている。1995・2000年には主要国で最も高かった日本の製造業の労働生産性水準は、2000年代に入ると大きく後退し、かつての優位性を失っている。

 

 

3 ドルベースでの製造業の労働生産性

 

製造業の労働生産性を円ベースでみると着実に上昇を続けているが、ドルベースではここ数年下落が続いている。ドル換算にあたっては、実際の為替レートの移動平均を用いているが、2015年をみると前年比で14%程度円安に振れてい る。そのため、円ベースで7%近く上昇している労働生産性が、ドル表示でみる と低下する格好になっている。

 

製造業の労働生産性水準上位15カ国の変遷

製造業の労働生産性水準上位15カ国の変遷の一覧表

 

 

 

OECD加盟国で デ-タが得られた29カ国で最も水準が高 かったのはスイス(185,906ドル/2084万 円)であった。第2位はデンマーク(146,904 ドル/1,647万円)、第3位が米国(139,686ド ル/1,566万円)と続いている。

 

スイスは、精密機械や食品、医薬品などのグローバル企業が本拠を構え、こうした企業を中心とする産業クラスターがスイス各地に形成されている。高い付加価値の源泉となるブランドや高度な知識・技術を持つことに加え、 産業特性として生産性が高くなりやすい精密機械や医薬品・バイオテクノロジーといった分野のウエイトが高い産業構造も、高い労働生産性水準に結びついている。

 

  

第2位のデンマークは、医療費や教育費が無料という高福祉国家であり、賃金も比較的高いことから製造業における空洞化が懸念されているが、補聴器や高級オーディオ、風力発電機などのニッチ領域で高い競争力を持っており、労働生産性が高い一因となっている。

また、 国家戦略としてICTやバイオテクノロジー、医療機器などの知識集約型産業を政策的にサポ ートすることで、産業の国際競争力の獲得につながっており、労働生産性を高める一因となっている。

日本においても第五期科学技術基本計画において「世界最先端の医療技術の実現による健康長寿社会の形成」や「エネルギーの安定的確保とエネルギー利用の効率化」などに関する様々な技術分野を政策的にサポートする計画であり、日本の製造業が労働生産性を 向上させる具体的方策を検討する上で、デンマークにおける事例は参考になるであろう。

 

 

日本の製造業の労働生産性は95,063ドル(1,066万円/第14位)となっており、フランス (103,075ドル)やドイツ(101,651ドル)、ルクセンブルク(96,014ドル)をやや下回る水準であった。これは、米国の概ね7割の水準にあたる。

2015年の日本の製造業の労働生産性をみるに あたっては、2015年の為替レートが(112.10円)が2014年度(98.80円)より13%程度円安に振れ た影響を考慮する必要があり、円ベースでみるかぎり必ずしも生産性の伸びが鈍化している わけではない。

2010年の段階で日本が上回っていたドイツやフランス、ルクセンブルクに逆転されているのも、為替が2015年までの5年で21.4%円安に振れた影響が大きい。 とはいえ、日本の製造業の労働生産性は、1990年代から2000年までトップクラスに位置し ていたが、その後順位が大きく後退しており、かつてのような優位性を失っている。こうし た状況は2010年代に入っても変わっておらず、トップクラスに位置する国々との差はなかな か縮まっていない。

 

 所感

 

日本の労働生産性は、OECD加盟35カ国中の平均以下であり、ほぼ順位は固定している。改革、改善では大きな順位向上は難しいのではないか。

この種の統計は、データの取り方により、順位が変動するので、必ずしも当てにならず、鵜呑みにするべきではないなどのコメントをよく見るが、継続的に一定のデータの取り方をしているので、長期的なトレンドを見るときには十分役にたつと思われる。

 

www.usa-stocks.com

  

 

 

 

 

最後までお読みいただきありがとうございました。楠木山人。