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イノベーションへの適合力とは:組織、人材投資、企業、ルール・制度面の課題(後編)年次経済財政白書(No.14の2)

平成30年度年次経済財政報告ー「白書」:今、Society 5.0の経済へー

(平成30年8月3日)

 

は、面白いので、少しずつ読んでいきます。内容が盛りだくさんで読み応えがあります。

 

 

今回は、

 

第1章 景気回復の現状と課題

各節省略

  

第2章 人生100年時代の人材と働き方

各節省略 

 

第3章 「Society 5.0」に向けた行動変化

 

第1節 第4次産業革命の社会実装

1 第4次産業革命の進展と経済構造への影響

2 集中化が進むプラットフォーム・ビジネスとデータ獲得競争

3 生産面・サービス供給面の改革:AI、IoTとロボティクスの普及

4 金融面の変化:FinTech/キャッシュレス化の進展

5 次世代モビリティ・システム、次世代ヘルスケアシステムの動き

 

第2節 イノベーションの進展と日本の競争力

1 企業レベルでみたイノベーションの現状とグローバル競争力

2 イノベーションの基礎力:人的資本、知識、技術力、研究開発の課題

3 イノベーションへの適合力:組織、人材投資、起業、ルール・制度面の課題

4 第4次産業革命の加速への挑戦

白書の注目点3:新たなイノベーションでの日本の強みと弱みとは

 

第3節 イノベーションの進展による労働分配率と生産性への影響

1 イノベーションの進展による労働分配率の変化

2 イノベーションの進展と生産性成長率

 

第4節 本章のまとめ:「Society 5.0」の経済へ 

 

 

のうちから、

 

第3章 「Society 5.0」に向けた行動変化

第2節 イノベーションの進展と日本の競争力

3 イノベーションへの適合力:組織、人材投資、起業、ルール・制度面の課題

 

について、グラフを中心に引用します。

 

  

 

 

第2節 イノベーションの進展と日本の競争力

 

2 イノベーションへの適合力:組織、人材投資、起業、ルール・制度面の課題

 

・日本は既存企業の”企業年齢”が高く、参入・退出が不活発

イノベーションを生産性向上につなげていくための経路や効率性の追求という観点では、資本や労働といった経営資源を再配分するメカニズムが有効に機能することも重要である。Baily et al. (1992)やFoster et al. (2001)によれば、高度な技術あるいは先進的なビジネスモデルを持つ企業が新たに市場に参入する、あるいは技術の陳腐化等により生産性が低下した企業が市場から退出することにより、経済全体のTFP(Total Factor Productivity:全要素生産性)成長率は高まると考えられる。

 

中小企業の企業年齢別の割合をみると、日本は、企業年齢10年以上の企業が全体の7割程度を占めており、設立後2年以内のスタートアップ企業の割合は、諸外国の中で最下位となっている(第 3- 2- 15図(1))。

 

第3−2−15図 企業の新陳代謝に関する国際比較

日本は既存企業の”企業年齢”が高く、参入・退出が不活発

(1)各国の中小企業の企業年齢別構成比

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また、開業率や廃業率をみると、日本はそれぞれ4%から5%程度の水準であり、アメリカ、英国、ドイツと比べて低い水準となっており、企業の参入・退出が相対的に不活発であることが分かる(第 3- 2- 15図(2))。

 

(2)各国における企業の開業率・廃業率の推移

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直近の動向について、日本の開業率はやや上昇しているものの、廃業率が低下している点には留意が必要である。OECD(2017)が指摘するように、仮に、需要構造の変化に十分に適応できない企業や、技術の陳腐化を食い止められない企業の退出が行われていない場合、そうした生産性成長率の低い企業に、資本や労働が固定化してしまう可能性がある。

この場合、新しい技術やアイデアを持っており、高い生産性を実現しうる新規参入企業などへと、経営資源が適切に再配分されず、経済全体の平均的な生産性が低下する可能性が考えられる。

 

・日本で企業の新規参入を妨げている要因

日本で新規参入企業が少ないことの背景としては、諸外国と比べて、起業家精神が低いことがあると考えられる。

 

Global Entrepreneurship Monitorの調査によると、日本では起業する意思のある人の割合が極端に低いが、その背景をみるために起業に関連した質問の回答状況をみると、失敗に対する恐れが大きいこと、成功した企業家に対する尊敬度合いが低いこと、起業家の女性比率が低いことなどが示されている(第 3- 2- 16図(1))。

 

第3−2−16図 日本で企業の新規参入を妨げている要因

(1)起業家精神に関数する国際比較(2017年)

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こうしたリスク回避的な姿勢の背景の一つとして、OECDの調査をみると、「学校教育において事業経営のスキルやノウハウを提供していると考えるか」という質問に対する回答状況は、日本でそう思うと回答した人の割合は対象国の中で最も低く、これまでの日本の教育において起業家精神を養うという観点が薄かったことが影響している可能性が考えられる(第3- 2- 16図(2))。

 

(2)学校教育が事業経営のスキルやノウハウを提供していると考える人の割合

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また、日本で起業する際に苦労した点について、日本政策金融公庫のアンケート調査をみると、「顧客・販路の開拓」に次いで、「資金繰り、資金調達」といった金融面の問題や経営面の問題が多く挙げられている(第 3- 2- 16図(3))。こうした事実の背景としても、起業にあたって資金や経営ノウハウをどのように確保するのかといったことに関する教育や支援が十分になされていないことや、ロールモデルとなり得る起業家が少ないことなどが影響している可能性が考えられる。

 

(3)開業時に苦労したこと

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・日本はリスクマネーの供給が少ない

資本や労働などの経営資源の再配分の観点では、銀行部門や金融市場が果たしている金融仲介機能も重要な役割を担っている。こうした金融仲介機能が不活発である場合、資本移動が妨げられ、新しい投資案件が実施されなくなってしまい、革新的な技術やビジネスモデルを持つ企業の成長が阻害される可能性が考えられる。

 

我が国の金融仲介の構造について、資金循環統計を用いて確認すると、家計、企業ともに、アメリカやユーロ圏と比べて、資金余剰の度合いが大きくなっている(第 3- 2- 17図(1))。

 

第3−2−17図 第4次産業革命に向けたリスクマネーの必要性

日本はリスクマネーの供給が相対的に少なく、ベンチャーキャピタルへの投資も少ない

 

(1)部門別資金過不足

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家計の金融資産については、規模は大きいものの、現預金比率が高く、欧米と比較して投資信託やファンド等リスク性資産の割合が少ないことが特徴である(第 3- 2- 17図(2))。

 

(2)家計金融資産の構成比率(2016年度 末)

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また、企業の負債構成をみると、間接金融とりわけ銀行等による負債性資金が相対的に多く、資本性の資金の割合がアメリカと比べて低くなっている(第 3- 2- 17図(3))。

 

(3)非金融法人企業の金融負債構成(2016年度末)

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また、研究開発の動向が先鋭的に現れやすいベンチャーキャピタル投資の動向をみても、我が国の投資規模は、諸外国と比べて低い水準に止まっている(第 3- 2- 17図(4))。なお、投資分野をみると、日本は、インターネット、モバイル通信などのIT関連が最も多く、次いでヘルスケアなどの医療関連が多く、特に医療関連はアメリカと比べて相対的に割合が高いことが分かる(第 3- 2- 17図(5))。

 

(4)ベンチャーキャピタル投資額(対GDP比)

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(5)ベンチャーキャピタル投資の業種別割合(2016年)

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イノベーションを促す規制の見直しや電子政府の推進

イノベーションが進展する中で、これまでの規制の枠組みでは念頭になかった新たな商品やサービスが提供されるようになっており、そうしたイノベーションに合わせて規制のあり方をスピード感を持って見直していくことは、イノベーションを促進する上で極めて重要である。

 

具体的な事例として、近年急速に増加している民泊については、多様化するニーズに対応した宿泊手段の一つとして定着しつつある半面、公衆衛生の確保や地域住民とのトラブル防止、 無許可で旅館業を営む違法民泊への対応などが課題となったことから、2018年6月から住宅宿泊事業法が施行され、住宅宿泊管理業者の事前届け出制などが導入された。

また、現在開発が進む自動運転についても、事故が起きた時の法的責任の所在など多くの法制面での課題が存在している。加えて、プラットフォーム・ビジネスの巨大化に伴い、プラットフォーム上で収集された個人データのポータビリティの問題や、プラットフォームの取引上の有利な立場を濫用するような行為の問題など、諸外国においては、競争政策等の観点からも多くの論点が指摘されている。

 

このように、新技術の社会実装による効果を十分に生かしつつも、安全性の確保、外部不経済の適正な抑制、公正な競争条件の維持などを図るための法制度の見直し等を同時に進めていく必要がある。

イノベーションは世界中で予測困難なスピードと経路で進化するため、社会を巻き込んで試行錯誤をしながら、失敗しても再び挑戦できるプロセスが有効であり、完全なデータと証明がないと導入できない従来の硬直的一律の制度設計では世界に後れを取る可能性がある。

こうしたことから、参加者や期間を限定することにより試行錯誤を許容する、規制の「サンドボックス」制度の導入が進められている。

 

また、第4次産業革命の成果を行政に活かし、規制改革、行政手続の簡素化、オンライン化などを一体的に推進することも重要である。

こうした観点から、行政サービスのインターネット化について国際比較をすると、日本は、行政サービスをインターネット経由で利用する人の割合が、OECD加盟国を中心とする34か国の中で最下位となっている(第 3- 2- 18図)。

 

第3−2−18図 行政サービスをインターネット経由で利用する人の割合

日本は、行政サービスをインターネット経由で利用する人の割合がOECDで最下位

 

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この背景としては、個人情報などをインターネット経由でやり取りする際のセキュリティに対する不安や、ワンストップ化の遅れ・添付書類の多さ・押印の必要性など本人確認手段の問題といった手続上の問題、一部のオンライン行政サービス利用に必要な初期コストの存在(例えば、ICカードリーダーの購入等)などが影響している可能性が高い。

こうした点を踏まえ、子育て、引越し、相続などライフイベントに係るサービスのオンライン化、ワンストップ化などを「フラッグシップ・プロジェクト」として進めるなど、行政サービスの利便性の一層の向上が求められているところである。

 

 

2 所感

日本の現状に対して、否定的なグラフがよく出てきます。それも、最下位だったり。

管理人は、創業10年以降の企業の方が、資金繰りや、様々なシステム構築なども整っていて良好であると思っていましたが、世界的には、そうとも言えないようです。

ブラジルやハンガリー、スペイン等の企業家精神の多さには、正直言って、驚嘆します。

また、起業する意思のある人の割合、54ヵ国中最下位 も衝撃的でした。

 

「学校教育が事業経営のスキルやノウハウを提供していると考える人の割合」の低さも、こんなものかなと思いました。

ただ、英国、イスラエル等も低かったので、これらの国々は、学校以外のところで、学びやすい環境づくりをしているのではないかと思いました。

失敗を極度に恐れる志向は、普段から、よく感じるものです。

管理人が受けてきた公教育は、易しい問題を間違わずに数多く回答できるかを競うものでした。

文科省の進めている教育改革には多いなる疑問を感じることしきりですが、これから、少しずつ、教育も変化していくことでしょう。

  

 

 

最後までお読みいただきありがとうございました。楠木山人。