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技術革新に対応したスキル習得の推進 抜粋。 年次経済財政白書を読んでみた。(No.4)

平成30年度年次経済財政報告ー「白書」:今、Society 5.0の経済へー

(平成30年8月3日)

 

は、面白いので、少しずつ読んでいきます。内容が盛りだくさんで読み応えがあります。

 

 

今回は、

 

第1章 景気回復の現状と課題

各節省略

 

 

第2章 人生100年時代の人材と働き方

第1節 技術革新・少子高齢化を踏まえた労働市場の課題

1 技術革新が労働市場に与える影響

2 少子高齢化の下で求められる働き方の多様性

 

第2節 人生100年時代の人材育成

1 技術革新に対応したスキル習得の推進

2 企業における人的資本投資の効果

3 社会人の学び直し(リカレント教育)とキャリア・アップ

 

白書の注意点2:人生100年時代には学び直しが大切

 

第3節 働き方の多様化が進む中で求められる雇用制度の改革

1 多様な働き方の導入とその効果

2 多様な働き方に向けた制度面の課題

 

第4節 本章のまとめ:人生100年時代の社会へ

 

 

第3章 「Society 5.0」に向けた行動変化

各節省略

 

 

のうちから、

 

第2章 人生100年時代の人材と働き方

第2節 人生100年時代の人材育成

1 技術革新に対応したスキル習得の推進

 

について、グラフを中心に引用したいと思います。

 

  

 

第2節 人生100年時代の人材育成 

 

第1節で考察した技術革新等が労働市場へ与える影響を踏まえると、最新の技術革新を担う人材や新技術に代替されにくいスキルを持った人材を育てていくことが急務である。

また、日本では長寿化がさらに進むことが予想されており、長い人生をより充実したものとするためには、性別や年齢にかかわらず高いスキルを身に付けられる環境を整備していくことが重要な課題である。

こうした観点から、本節では人生100年時代、技術革新を見据えた人材育成の課題を探るために、学校・大学教育、企業内訓練、社会人の学び直しのそれぞれの場における教育・訓練の効果を定量的に分析し、論点を整理する。

  

1 技術革新に対応したスキル習得の推進

 

・デジタル時代に必要となるスキルとは

第1節でみたように、技術進歩によって必要性が高まる職業は、機械によって代替されることが困難な非定型の分析・対話型業務を行うものである可能性が高い。

こうした業務には、単にITを使いこなす能力だけにとどまらず、機械には代替が困難な様々な能力も求められる。

ここでは、具体的にどのようなスキルが必要とされるのかについて、より詳細に分析を行う。

 

まず、企業側がどのような能力を重視しているかについて、内閣府企業意識調査の結果をみてみよう。

第 2- 2- 1図(1)は、企業が今後重要になっていくと考える能力について、新技術活用へ向けた取組を行っている企業と行っていない企業別にみたものである。

傾向的には両者は類似しており、マネジメント能力、専門的な知識・技能、コミュニケーション能力、アイディア力等が上位にきている。

新技術活用に積極的な企業がどのような能力をより重視しているか確認するため、両者の差分をとると(第 2- 2- 1図(2))、創造力、ITを使いこなす能力、マネジメント能力、分析力・思考力、コミュニケーション能力等をより求める傾向があり、営業力・接客スキルや、定型的な業務を効率的にこなす能力等の需要が低い傾向があることがわかる。

 

第2−2−1図 企業が今後重視する能力

マネジメント能力やコミュニケーション能力等が求められる

(1)企業が今後重視する能力

(2)ICTを活用している企業と活用していない企業の差

 

第2−2−1図 企業が今後重視する能力のまとめグラフ集

 

(1)企業が今後重視する能力

企業が今後重視する能力のまとめグラフ集 企業が今後重視する能力の表示グラフ

 

 

(2)ICTを活用している企業と活用していない企業の差 

企業が今後重視する能力のまとめグラフ集 ICTを活用している企業と活用していない企業の差 

 

 

次に、PIAACのデータを使い、ITを仕事で使う頻度の高い人は、他にどのようなスキルを使う頻度が高いのかをみたのが第2-2-2図である。

これによると、読解、書く、算術といった基礎的な能力のほか、複雑な問題解決、他者との交渉や説得等といった、分析や伝達を行うスキルの使用頻度との相関が高いとの結果が得られており、企業アンケートと概ね整合的な結果になっている。

また、日本とOECD平均とを比較しても、両者に明確な違いは見られないことから、相関の高いスキルはおおむね世界共通であると考えられる。

 

読解や伝達等の意味を理解し柔軟な対応を行う頻度が、ITを使う頻度と相関が高いことの背景には、これらがAIやIT技術では代替できない能力であることが指摘できる。

AI等の新技術が発達するにつれ、今後そのような能力の重要性は増していくことが考えられる。

例えば、第1章3節では、新聞記事の内容が景気の良さと悪さのどちらを示しているかを機械に判断させる分析を行ったが、機械は記事の内容を一切理解してはおらず、出てくる単語や文章の構造等が景気の良い内容である確率を過去のデータに照らして統計的に算出しているに過ぎない

その計算結果が適切か、計算結果をどう解釈・説明するかについては、因果関係や文脈等を考慮した人間による判断が必要となる。

 

第2−2−2図 ITの利用頻度と相関の高いスキル

機械では代替が困難な読解や伝達等のスキルの相関が高い

(1)コミュニケーション・情報検索に関するITスキル

(2)オフィス用ソフトウェアの使用に関するITスキル

 

第2−2−2図 ITの利用頻度と相関の高いスキルの一覧まとめグラフ集 

 

(1)コミュニケーション・情報検索に関するITスキル

ITの利用頻度と相関の高いスキル コミュニケーション・情報検索に関するITスキルを説明するグラフ

 

(2)オフィス用ソフトウェアの使用に関するITスキル

 ITの利用頻度と相関の高いスキル オフィス用ソフトウェアの使用に関するITスキルを説明するグラフ

 

・不足するIT人材

技術革新に対応した人づくりを行うためには、機械では代替が困難な能力を伸ばすとともに、そもそものAI等の先端技術を開発し専門に扱える高度なIT人材の育成を行うことも併せて重要な課題である。

情報処理・通信に携わる人材(IT人材)の割合をG7諸国で比較すると(第 2- 2- 3図(1))、

就業者に占める割合は

①日本では1.8%であるが、

②英国5.2%、

アメリカ3.0%

など、他の6か国は日本よりもその割合が高く、IT人材が諸外国と比較して少ない可能性が考えられる。

 

また、IT人材の所属している企業についても日本は諸外国と比較して特徴的な傾向がみられる(第 2- 2- 3図(2))。

日本ではIT人材の7割程度がIT企業に勤務しているが、諸外国ではその割合が3割強から5割弱であり、IT企業以外の企業にもIT人材が勤務していることがわかる。

諸外国では幅広い産業にITの専門家が存在しており、ITを積極的に活用していることが考えられるが、日本ではIT企業以外の企業にITの専門家が少なく、企業経営におけるITの活用の阻害要因になっている可能性がある。

例えば、23か国の企業幹部を対象に実施したアンケート結果をみると(第 2- 2- 3図(3))、ビッグデータやアナリティクスを用いた意思決定割合は、他のG7諸国や調査対象国平均の割合を下回り、日本が最下位となっている。

 

第2−2−3図 IT人材の国際比較

日本にはIT人材が少なく、かつ人材がIT企業に集中している

(1)IT人材の就業者に占める割合

(2)IT企業とそれ以外の企業に所属する情報処理・通信に携わる人材

(3)企業幹部によるビッグデータ戦略的価値の認識度

第2−2−3図 IT人材の国際比較 のグラフ集

 

(1)IT人材の就業者に占める割合

IT人材の国際比較 IT人材の就業者に占める割合のグラフ

 

(2)IT企業とそれ以外の企業に所属する情報処理・通信に携わる人材

IT人材の国際比較 IT企業とそれ以外の企業に所属する情報処理・通信に携わる人材の所属別の特徴を明示したグラフ

 

(3)企業幹部によるビッグデータ戦略的価値の認識度

IT人材の国際比較 企業幹部によるビッグデータの戦略的価値の認識度の分析の一覧グラフ

 

・技術革新と学校教育の課題

上記を踏まえれば、今後は、読解力等の基礎的な能力に加え、適切な分析・伝達ができる能力や、ITの専門人材の育成等がより重要になってくると考えられる。

では、このような能力や人材を育成していくために、現在の日本の学校教育にはどのような課題があるだろうか。

OECD(2017)はデジタル時代に必要なスキルとして、科学的・数学的リテラシーを挙げているが、各国の15歳におけるこの能力が高い生徒の割合をみると日本はOECDトップであり(第 2- 2- 4図(1))、デジタル時代に対応するための基礎的な能力は高いことが示唆される。

ただし、近年改善傾向ではあるが、理科や数学が日常生活で役に立つと考えている生徒の割合が国際平均よりも低いことから(第 2- 2- 4図(2))、学校教育で学んだことをどのように活用していくか、いわば、スキルの活用に弱点がある可能性が考えられる。

 

IT技術との関係では、より積極的にITを学校教育でも活用していくことで、ITを使う能力を高めていくことも求められる。

中学校におけるコンピューター1台当たりの生徒数ではOECD平均(4.7人)を下回り3.6人であり、国際平均と比較してコンピューターが不足しているわけではない。

しかし、中学校でITを利用した生徒の割合をOECD諸国と比較すると(第 2- 2- 4図(3))、日本はOECD平均や諸外国を大きく下回り、最も利用割合が少ない国の一つとなっており、学校教育におけるITの利活用ができていない可能性が示唆されている

 

IT技術で代替が難しい問題解決能力や分析能力を鍛えるためには、受動的に与えられたことをこなすだけではなく、生徒が能動的に考えることや、批判的思考を促すこと等が重要であると考えられる。ただし、日本の教員はこのような生徒の主体性を引き出せるという自信が、調査国平均と比較して低くなっている(第 2- 2- 4図(4))。また、新井(2018)は、このような能動的な学習の前提条件となる読解力を有している学生が少ないため、教科書を正確に読める能力を高めることが重要であることを指摘している。

 

 

企業が学校・大学に期待する教育内容という観点からは、企業は中学校・高校では基礎学力や一般教養等の基礎的な教育を求め、大学・大学院ではより専門的な教育を求める傾向がある(第 2- 2- 4図(5))。

ただし、現状ではこのような企業の期待に教育が十分に応えているとは言い難く、経営者による教育体系の評価を国際比較すると(第 2- 2- 4図(6))、OECD平均並みとなっていることから、今後の更なる改善の余地があると考えられる。

 

第2−2−4図 日本の学校教育の課題

生徒のポテンシャルは高いものの、主体的な学びやICT利用に課題

(1)科学的・数学的リテラシーのスコアが高い生徒の割合

(2)各科目が日常生活に役に立つと考える生徒の割合

(3)学校でICを利用した生徒の割合

(4)主体的な学びの引田だしに自信を持つ教員の割合

(5)企業が期待する教育内容

(6)教育体系と産業界のニーズの合致度(各国経営者による評価)

 

第2−2−4図 日本の学校教育の課題

 

(1)科学的・数学的リテラシーのスコアが高い生徒の割合

日本の学校教育の課題 科学的・数学的リテラシーのスコアが高い生徒の割合(日本は非常に高い結果を示しているグラフ

 

(2)各科目が日常生活に役に立つと考える生徒の割合(%)

日本の学校教育の課題 各科目が日常生活に役に立つと考える生徒の割合(国別の分析結果のグラフ)

 

(3)学校でICTを利用した生徒の割合

日本の学校教育の課題 学校でICTを利用した生徒の割合の国別のグラフ

 

(4)主体的な学びの引き出しに自信を持つ教員の割合

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(5)企業が期待する教育内容

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(6)教育体系と産業界のニーズの合致度(各国経営者による評価)

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・IT人材育成に向けた大学教育の課題

不足している高度なIT技術を有した人材の育成に対しては、大学教育が果たす役割が特に重要であろう。

日本のIT人材が諸外国と比較して少ないことの背景の一つには、高度なIT関係分野を専攻する学生が少ないことが考えられる。

大学等の高等教育機関入学者のうち理工学系を専攻する学生の割合をみると(第 2- 2- 5図(1))、日本はOECDの平均よりも低く、ドイツの半分程度の割合となっていることがわかる。

また、理学部・工学部に在籍する学生数の推移をみると(第 2- 2- 5図(2))、少子化の影響もあり2000年の56万人から2017年の46万人へと減少しているが、大学生の総数に占める割合でみても2000年の23%から2017年18%へ低下していることが確認できる。

 

こうした中、大学で専攻した分野と、企業が必要としている知識分野のギャップが生じている。

第 2- 2- 5図(3)は、技術系の職業に就いている者に対し、現在の業務で必要としている分野と大学で学んだ分野を調査し、それぞれの回答割合の差分からギャップを確認したものである。

企業で必要とされているにもかかわらず、大学で学習している者が少ない分野として、「ハード・ソフト、プログラム系」、「機械工学」、「通信、ネットワーク、セキュリティ系」、「データベース・検索系」が指摘できる。

 

また、各国でIT関連の仕事に就いている者の最終学歴における専攻分野をみると(第2- 2- 5図(4))、

①日本は情報工学情報科学を専攻した者の割合が23%であり、

②中国の62%、

③韓国の58%、

アメリカの44%

と比較すると非常に低くなっている。

このような専攻分野と職務内容のミスマッチの結果、現在の業務で必要な専門知識を学んだ場所を調査した結果では(第 2- 2- 5図(5))、「大学等で学んだ」と回答した者の割合は情報系で33%と最も低い値となっている。

逆に、大学等で学んだ割合が高いのは人文科学系であり、8割以上が大学等と回答している。

情報系で回答割合が多い項目は、企業内研修や自主学習であり、この2つを合計した割合は40%程度と、全体(25%)を上回り、最も高い値になっている。

 

 

こうした現状を踏まえれば、IT分野等で高い専門性を持つ学生を大学等が輩出していくことは、技術革新に対応するための急務である。

例えば、工学系学部の卒業生の就職先は多様化しているにもかかわらず、工学系学部の入学者の分野割合は過去25年間で大きな変化がないとの指摘もある。

第4次産業革命に求められるIT人材は、従来のIT人材に求められる資質とは異なるとの指摘もあり、より社会的なニーズに応えるためには、大学等における専攻分野の定数やカリキュラムを柔軟に見直していくことが必要である。

さらに、IT分野以外を専攻している学生においても、当該分野の知識を有する学生は相当程度存在しているとの指摘もあるが、このように専攻分野にかかわらず、データ分析やプログラミング等の一定程度のITリテラシーを持つ人材を育成していくことも成長の鍵となる。

 

第2−2−5図 高度なIT人材の育成と大学教育

日本は理工学系の学生が少なく、企業のニーズとの間にミスマッチが生じている

(1)高等教育機関入学者のうち理工学系を専攻する学生の割合

(2)理学部・工学部に在籍する大学生

(3)大学で学んだ分野と業務で必要とする分野のギャップ(上位6位、技術系職種)

(4)各国IT人材の最終学歴における専攻分野

(5)現在の業務で必要な専門知識を学んだ場所

 

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(1)高等教育機関入学者の理工学系を専攻する学生の割合

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(2)理学部・工学部に在籍する大学生

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(3)大学で学んだ分野と業務で必要とする分野のギャップ(上位6分野、技術系職種)

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(4)各国IT人材の最終学歴における専攻分野

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(5)現在の業務で必要な専門知識を学んだ場所

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2 所感 

 

年次経済財政白書から、「技術革新に対応したスキル習得の推進」についてを引用しました。

 

日本では、理工系を専攻する学生の割合が減っていることは知っていましたが、今や、18%にまで下がっているということは驚きでした。2000年から2016年までで、4%減少しています(2000年は、22%いた)。

日本では、情報工学情報科学専攻は25%、その他理系専攻25%、文系専攻50%の割合です。グラフでは中国、韓国、米国との比較ですが、日本の情報工学情報科学専攻者の割合が低いです。中国に至っては、60%が情報工学情報科学を専攻しています。IT化が進む時代において、日本がIT分野で取り残されるのは、必定のようです。

IT分野は特に、標準化のリーダーとなれば、影響力が強くなるので是非とも押さえたいと思っています。

 

ただ、グラフを見ていて、その他理系専攻が25%がいるということは、詳細な分野は明記はされていませんが、その分野で発展していく可能性はあると思います。医学生理学、バイオ・農学方面でしょうか。その他理系の分野で、違いを見せるという方法も、またあります。

 

 

 

 

最後までお読みいただきありがとうございました。楠木山人。